TIKTOK海外旗艦店設立に向けて
前回のレポート「【中国「独身の日」速報】取扱額公表を初めて見送り！！｢独身の日｣に見る2022年中国EC市場動向」で、三大ライブコマースプラットフォーム（TIKTOK・KUAISHOU・TAOBAOLIVE）の成長率が、三大ECプラットフォーム（アリババ集団・京東集団・PINDUODUO）の成長率を遥かに上回ったことをお伝えしたことからも明らかなように、中国EC市場では、ライブコマース・動画コンテンツが成功に不可欠な要素になっています。今回のレポートでは最も成功しているTIKTOKの中国本土版「抖音（DOUYIN）」で海外旗艦店を出店する場合のビジネスモデルと物流の仕組みを解説します。
「抖音（DOUYIN）」とは
今回は三大ライブコマースプラットフォーム（TIKTOK・KUAISHOU・TAOBAOLIVE）の中でも、アクティブユーザー数が8億人超と最大で年齢層も幅広い中国版TIKTOKで海外旗艦店を展開する場合のビジネスモデルとその物流の仕組みを解説します。中国でTIKTOKは「抖音（DOUYIN）」という名称で多くの人に親しまれている動画コンテンツ配信アプリで、日本人が日々利用している、いわゆるTIKTOK国際版とはプラットフォームが全く異なります。一番の大きな違いはプラットフォーム上にEC機能が付いている点です。DOUYINはSNSや動画配信プラットフォームとしてだけでなく、中国EC市場で非常に存在感を増している販売プラットフォームでもあります。
DOUYINは「バイトダンス（字節跳動有限公司）」により2016年9月にリリースをされたショート動画アプリで、日本では2017年10月にTIKTOK国際版としてリリースされました。DOUYINでは一般的に15〜30秒のショート動画を投稿、またはライブ動画を配信・視聴できるアプリとしてすでに中国の社会インフラになっています。ユーザーが興味を持つと判断されたコンテンツをAIレコメンドシステムによって、おすすめ動画がユーザーに合わせて次々と配信さる仕組であることは日本のTIKTOKと同様です。ユーザーは気軽にたくさんのショート動画を視聴し、興味のないものをスキップし、興味のあるコンテンツを探していくモデルです。視聴者数の少ないコンテンツでも、AIでおすすめコンテンツをユーザーに合わせて配信するため、フォロワー数が少ない始めたばかりのアカウントでも個別の動画で100万回以上再生数を獲得できることもあります。個人アカウントと違って企業が海外旗艦店を開設することによって有料での動画プロモーションや広告投下が可能となり、より多くのユーザーとの接点を作り出すことが容易にできます。また、ライブコマースも同じプラットフォーム上で行うことができますので、ユーザー開拓から即販売というビジネスモデルを実現したプラットフォームともいえます。
「抖音（DOUYIN）」のライブコマースEC機能
DOUYINで日本の企業が商品を販売する場合は、公式アカウントの開設と・海外旗艦店モデル(B2Cチャネル)設立が求められます。前述の通り、DOUYINなどライブコマースプラットフォームは今年の「独身の日」のイベントなどですでに「天猫国際（Tmall Global）」、「京東国際（JD Global）」などの従来型大手ECプラットフォームを上回る爆速成長を遂げました。DOUYINを利用するユーザーは男女ほぼ半々で、特に35歳以下の若年層に大きな支持を得ています。新しいモノや体験を求め、価格・品質へのこだわりが強くスマートフォンを使いこなすユーザーは積極的にDOUYINを活用していると言っていいでしょう。
DOUYINはライブコマースというライブ販売のコンテンツに、有名インフルエンサーを活用することを容易にしています。販売力の高い有名インフルエンサーがDOUYIN管理画面上でリクルーティングできる仕組となっており、これによってまだ中国で知られていない商品でも、最新の販促手法で興味を持つユーザーに次々と接触することが可能です。そして購買意向がありそうなユーザーを自動的に商品購入リンクへと誘導してワンストップで商品を販売できるのです。動画コンテンツで未知の商品と出会うことができ、かつワンクリックで購入できるという高いユーザービリティが8億人を超える莫大なユーザーを抱えている大きな要因となっています。
「抖音（DOUYIN）」の運営について
DOUYINで情報発信してブランド旗艦店で販売するというビジネスモデルは、中国で知名度が低い海外企業に適したマーカティング手法と言えるでしょう。企業アカウントの開設には保証金が必要ですが安価です。出店用の証明書類を専門会社に依頼して事前準備ができれば審査に進みます。その際にバイトダンスが商品の市場価値を様々な角度から判断しますので、審査が通れば中国市場で爆売りの第一関門が突破したとの見方もできます。但し、中国市場では強力な競争相手が多く、商品を安定的に販売するまでにライバル各社を上回る広告費を投下し、現地パートナーに依頼してライブコマースを配信していく必要があります。出店立地としては最高のDOUYINですが、マーケティング投資の大きさから考えると資金力が必要で、すでに日本で知名度があり新たに中国市場に進出したいブランドが最もマッチしているとい言えます。
またDOUYINで販売するためには、中国にある保税倉庫に販売量に見合う一定の初期在庫を保管する必要があります。そして、この保税倉庫にある在庫をいかに売り尽くすのマーケティングプランを検討することがスタートとなります。初期段階で集中的に資金を投下して売上を伸ばすか、時間を掛けて分散して資金を投下していくかの二択がありますが、中国市場の競合ブランドは基本的に集中的に資金を投下して売上を獲りに来る戦略を採用するために、分散して資金を投下する戦略を取った場合、狙った以上に認知が上がらず良い結果に繋がらないケースが非常に多く見られます。
「抖音（DOUYIN）」の物流の仕組みについて
DOUYINの物流は、天猫国際（TMALL GLOBAL）のように独占的な物流サービスを指定されることはありません。「JD京東物流」や「SF EXPRESS（順豊エクスプレス）」、「極兔速逓（J&T EXPRESS）」などの中国大手物流会社と提携しており、出店企業が自社にあったサービスを自由に選択できるのが特徴と言えます。但し、前述した通りDOUYINの海外旗艦店では、プラットフォーム側より保税倉庫の利用を指定されていますので、保税区からEC発送が可能な倉庫と契約することが不可欠です。倉庫の選定に際しては、DOUYIN側でも実績のある提携先を紹介してくれますので現時点で中国側の倉庫と繋がりがなくても問題はありません。DOUYINに入ったオーダーは保税区の倉庫とシステムでリアルタイムに結ばれているため、出荷数に応じて関税も自動的に計算されていく仕組みです。関税や保税区での物流費も開店の時の商品審査の時点で概算のコストが把握できるので、それを加味して価格設定をしておくことが非常に重要になります。
海外旗艦店の開設は審査さえ通れば手続きは容易ですが、多くの競合ブランドに勝つためには現地パートナー会社による店舗運営と高頻度でライブコマースを展開することが不可欠となりますので、初期段階では現地パートナー会社の選定が大きな鍵になります。ダイレクトチャイナではこのパートナー選びにおいても、初期販売の成功に定評のある運営会社の紹介や日本語の窓口対応が可能なパートナーの紹介が可能ですので、お気軽にお問合せフォームより相談ください。
まとめ
今回のレポートは、中国最大手のECプラットフォームで、特に若いZ世代に絶大の影響力を持つDOUYINのビジネスモデルの仕組みを解説しました。同社の強みは圧倒的なユーザー数、完成されたライブコマースからの販売の仕組み、無名ブランドでもユーザー接点が簡単に作れるビジネスモデルの3点にあると分析しています。現在、中国のマーケッターにEC販売するならどこがいいと聞くと、間違いなくDOUYINと答えるのではないでしょうか？
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