【中国独身の日、速報】取扱額公表が初めて見送り!!「独身の日」に見る2022年中国EC市場動向

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2022.11.15

【中国「独身の日」速報】 取扱額公表を初めて見送り!!「独身の日」に見る2022年中国EC市場動向
今回は、このレポート公開直前に終了した世界最大のオンラインセール「独身の日」商戦の実態を速報するとともに、「独身の日」から見える5つの2022年中国EC市場動向を解説します。

最大手のアリババ集団も業界2位の京東集団も今までは大々的に発表してきた「独身の日」の取引総額を今年は初めて公表せず、アリババ集団(天猫・タオバオ)が“昨年並み”、京東は“業界平均成長率を上回った”という発表となりました。両社が取引総額を公表しなかったことは、2009年にセールが始まって以降で初めてのことで、中国EC市場が新たなステージに入ったといえます。今回のレポートでは「独身の日」の実態から読み取れる5つの中国EC市場動向を皆さまに共有していきたいと思います。

動向1:華々しい取引額が年々公開される成長期が終わり、ロイヤルカスタマー重視の成熟期へシフト

Syntun(中国)の統計データによると、今年の「独身の日」(10月24日20:00〜11月11日23:59)では、三大ECプラットフォーム(アリババ集団・京東集団・Pinduoduo)の取引総額は、前年比2.9%増の約9,340億元(日本円で1元20円換算すると18.68兆円)でした。前年比3%程度の成長率は、2009年から2021年まで13年間も爆増し続けた「独身の日」取引額の成長が遂に上限に達したという見方もあります。

図1:2009年から2021年天猫の独身の日のキャンペーンの取引額(単位:億元)

 

中国人による“爆買い”の象徴である「独身の日」の取引額を公表しなかったことは、中国ECプラットフォーム各社が事業の成長よりも安定化にシフトしたと分析できます。中国EC市場はこの20年もの間に世界一の市場規模まで拡大しましたが、今後も無限に成長し続けると予想することは現実的ではありません。そのためプラットフォーム各社は、これまでのように単なる客数の増加ではなく、客単価とリピーターを増やすことに戦略をシフトしたといえるでしょう。

セール期間中、天猫プラットフォームでは取引額が20億円を超えたブランドは130社でした。リピーターからの売上が前年比100%以上も成長したブランドは5,600社もあります。また天猫の「独身の日」予約販売では、6,600万人以上のユーザーがブランドの会員入会手続きを進めたことがわかりました。

具体的な事例を紹介すると、2001年に中国の上海で誕生した化粧品ブランド自然堂(CHANDO)は天猫プラットフォームで1,000万人以上の会員数を持っていますので、キャンペーン開始後の1時間で20億円の売上を達成しました。ロイヤルカスタマー数がブランドの売上にダイレクトに影響することがわかります。EC市場の成熟に伴って新規顧客の獲得が難しくなる中、販促コストをかけずに多くの売上をもたらすロイヤルカスタマーの重要性は高まりつつあります。

 

動向2:消費者側は景気の先行きが不透明であることに配慮して持続可能で節約志向な消費行動へシフト

「独身の日」セールは14年目を迎えて、消費者も成熟し、以前のような衝動買いを抑制し、自分が欲しい商品が何かを今まで以上に理解して購入するようになってきています。また、中国政府によるゼロ・コロナ政策の厳しい規制と急激な景気後退が影響した結果、中国の消費者はサステナビリティや節約を志向する消費行動へとシフトしました。

2022年の中国の「独身の日」に関する消費者調査について、グローバル・コンサルティング・ファームのアリックス・パートナーズは中国全土約2,000名の消費者を対象に消費者を行いました。調査結果によると、60%の消費者が独身の日の支出を増やす予定でしたが、高級品よりも日用的な生活必需品・洋服・靴に昨年よりも支出を増やす意向だということが明らかになりました。また、14%の消費者が支出を減らす予定と回答しています。支出を減らす理由として、「経済・将来への不安」が47%、「より持続可能で節約志向な消費行動への意識」が35%、「所得の低下」が33%でした。

天猫プラットフォームの公開データに、このトレンドが如実に表れています。セール期間中、天猫プラットフォームでの成長率が1,000%を超えたカテゴリは4つあります。温冷美顔器の成長率が5,568%、電気カーペットクリーニングマシンの成長率が3,034%、試運転予約サービスの成長率が2,230%、小型洗濯機(ミニ洗濯機)の成長率が2,043%でした。この4つのカテゴリのいずれもライフスタイルに関するものです。「独身の日」を牽引する若者の消費志向は、実用主義に転換したことがわかります。これまで浸透していなかった在宅勤務や在宅学習といったオンライン生活が、中国政府によるゼロ・コロナ政策で一気に加速し、人々の消費はますます理性的になり、消費者は不要不急や贅沢品の消費を抑えて、節約志向に転換したといえます。

 

図2:天猫の化粧品カテゴリ成長率ランキンググTOP4

 

動向3:物流業者側は数兆円規模の注文と物流需要が短期間に発生する独身の日に対応するために、人工知能(AI)やビッグデータに積極投資

中国国家郵政局によると、2022年11月1~11日の期間中に全国の郵便局で速達を含めた郵便荷物を処理する業務量は42.72億件でした。去年の同じ時期は47.76億件で5億件ほど減少しましたが、日本宅配便大手3社(ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便)の2021年度一年年間の合計取扱個数(46億個強)相当が、この短い期間に動いたのは事実です。また1日の業務処理量は5.52億件で、過去最高を記録した去年の6. 96億件と比べると1.4億件あまり減少したとはいえ、通常の業務量と比較して1.8倍です。

「独身の日」による物流需要は数兆円規模となり、中国では物流業界のイノベーションが求められています。例えば、京東集団傘下のスマート物流企業である京東物流(JD Logistics)は、AI活用の自社物流網を中国全土に張り巡らせることで、配送スピードを加速させました。また、アリババ集団傘下のスマート物流企業である菜鳥網絡(Cainiao)も、独自開発した人工知能(AI)のアルゴリズムを活用し、包装のリサイクル利用を最大化しています。「独身の日」 の物流需要が引き金となって、中国物流業界は、AIとビッグデータを活用してサプライチェーンを最適化し続けていることが読み取れます。

 

図3:アリババグループのスマート物流企業である菜鳥の技術革新

 

動向4:政府側は格差縮小を目指す「共同富裕(皆が共に豊かになる)」の実現に向けて統制強化へ

 10月16~22日の7日間、北京で行われた、5年に1度の中国共産党大会では、習国家主席が「共同富裕」に対する強調をしたこともあり、インターネット通販プラットフォーム各社は、儲け過ぎの批判を避けたいがために、「独身の日」セールでの累計取引額を明らかにしないようになったと推測する声もあります。

共同富裕はなぜ話題になったのでしょうか。そもそも共同富裕とは、毛沢東が1953年の建国初期に、「資本主義的商工業を段階的に社会主義化し、農業の社会主義化、合作化を通じ『共同富裕』を実現する」と共産主義思想の基本なものとして初めて唱えたものです。そして、1978年の改革・開放政策の開始以来、中国経済は一時期の停滞があったため、毛沢東の後継者・鄧小平が共同富裕に賛同しつつ、「まずできる人から豊かに暮らそう」という先富論を主張しました。また、中国の経済成長にともなう貧富の格差拡大があるため、2021年の重要会議で中国の習国家主席は従来よりも一歩踏み込む形で、「我々は貧富の拡大を許容しない。共同富裕実現は経済問題であるだけでなく、党の執政に関わる重大な政治問題だ」と述べました。

近年、政府側が国民の不満を和らげるため、「極端な貧富の差」の是正に取り組んでいます。例えば、アリババ集団など巨大ネット企業などに対する独占禁止法違反を理由とした罰金の徴収、ライブコマースなどで活躍する有名人に対する税務調査強化や罰金の徴収、富裕層の財産に対する課税強化や富豪による第三次分配(高額寄付)の奨励など、金持ち崇拝(拝金主義)を戒めるような動きが出てきました。また、高価なことで庶民の生活を苦しめてきた教育問題・住宅問題・医療問題などの社会問題を解決するようにしています。

具体的な事例を紹介すると、プラットフォーマーの独占的な行為を規制する新たな指針の草案は2020年12月に発表されました。そして、2021年4月10日に、中国で競争政策を担う中国国家市場監督管理総局(SAMR)は、電子商取引最大手のアリババ集団が独占禁止法に違反したとして、罰金180億元(27億5,000万ドル)を科したと発表しました。具体的には、アリババ・グループが2015年から市場における支配的地位を乱用し、自社通販サイトの出店者が他のプラットフォームに出店することを禁止する、「二者択一」の慣行が独占禁止法違反にあたる、と中国国家市場監督管理総局(SAMR)が判断したためです。プラットフォーマーに対する統制強化を進める中国市場では、国営企業が躍進し、民営企業が後退するとの現象は共同富裕政策でさらに進めるだろうと考えられます。

 

図4:中国統計局が公開した1978年から2020年の都市部・農村部住民の可処分所得額

 

動向5:ブランド側はプラットフォーム上での露出数を増やすことより、ネット有名人(KOL・KOC・ソーシャルバイヤー)のライブコマース重視へ

Syntun(中国)の統計データによりますと、今年の「独身の日」イベント(10月24日20:00〜11月11日23:59)では、3大ライブコマースプラットフォーム(Douyin・Kuaishou・TaobaoLive)の取引総額が、前年比146.1%増の約1,814億元(日本円で1元20円換算すると3.6兆円)でした。三大ライブコマースプラットフォーム(Douyin・Kuaishou・TaobaoLive)の取引総額成長率(146.1%)が三大ECプラットフォーム(アリババ集団・京東集団・Pinduoduo)の取引総額成長率(2.9%)をはるかに上回っていることが判明しました。中国EC市場は、すでにライブコマースを抜きでは語れないほどに活況を呈していることがわかりました。

『2022年中国ライブコマース市場データレポート』によりますと、2021年中国ライブコマース市場規模が2.4兆元(約48兆円)で2017年の196.4億元(約3,928億円)より120倍も成長してきました。また、2022年の成長率が47.7%で、市場規模が3.5兆元(約70兆円)まで拡大すると予測しています。

今年の「独身の日」イベントで最も売れたライブルームは、中国最大級のソーシャルバイヤーである李佳琦氏のライブルーム「Li Jiaqi’s Liveroom(李佳琦直播間)」でした。今年の「独身の日」イベント初日(10月24日)に、ライブコマースは累計4.6億のUV数(Unique Visitor)と、215億元(約4,300億円)を超えたと推測されています。天猫プラットフォームの公開データによりますと、李佳琦氏のライブルーム当日(10月24日)の4時間のプレセール枠でのトップ3ブランドのロレアル、ランコム、エスティローダーは、そのまま天猫の化粧品カテゴリのW11初日のGMVランキングトップ3ブランドとなりました。ライブコマースで常に商品を露出させないと、競争力が落ちてしまう市場構造が中国ではできあがっていることが明白になりました。

図5:天猫の化粧品カテゴリのW11初日のGMVランキングTOP20

 

最後に

中国EC市場の成長率の鈍化や、労働者の賃金の高騰を受け、撤退を決める日系企業も出始めていますが、今年の独身の日の変化は停滞ではなく、消費行動が新たな段階に入ったと見るべきでしょう。

今後もダイレクチャイナでは、中国越境物流の事情や、中国越境EC市場の動向を常に研究し、レポートを配信し続けてまいります。現在の配送形態を見直したいお客様、これから越境ECを立ち上げ最適な物流形態を構築したいお客様、中国に自社商品を販売したいお客様むけの個別面談の機会も随時受け付けております。

特に、コロナ禍が世界中の消費生活を大きく変化させました。中国は巨大市場であることは事実です。そして、その巨大市場の時流を正しく読み取ることが中国に商品を販売するために非常に重要ではないでしょうか。

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