中国ビジネスの3つの形態〜中国進出を目指す企業が押さえておくべきこと〜

-越境販促-

2022.02.08

日本企業が中国人に自社商品を販売する方法は次の3つあります。インバウンド販売、越境EC販売、一般貿易販売です。以下で詳しく紹介させていただきます。

1.  インバウンド販売について
インバウンド販売とは、日本国内の小売店で、中国からの訪日旅行客へ商品を販売することです。また、海外の商品をユーザーに代わって購入し、購入手数料を上乗せして販売することで利益を得る「代理購入者」も数万人国内に存在し、ソーシャルバイヤーと呼ばれています。

新型コロナウイルス変異株の影響の影響で、国際的に人の移動に対する制限が続いており、現在、インバウンド販売が急速に冷え込んでしまいました。日本政府観光局(JNTO)によると2021年の訪日外客数は24万5,900人で大きく落ち込んだ2020年比のさらに94.0%減となりました。コロナ以前の2019年は3,000万人を超える外国人旅行者が訪日し、そのなかで中国からのインバウンドは国別レベルでも最大であり、一人当たりの消費額も高く、まさに中国人に依存していたインバウンド市場でした。インバウンド需要はコロナ禍のような環境下では大打撃を受けたビジネスモデルですが、大きな投資をすることなく中国人に自社商品を売ることができる面では大いに期待されます。多くの会社が現在コロナ禍の終焉を見越して、再準備に入っておられます。
インバウンド販売については、以下の3点の準備事項があるかと思います。

①中国人消費者の評価を高めておくことです。ソーシャルバイヤーが好むのは、主にユーザーの多い人気商品です。ソーシャルバイヤーは、SNS等での個人客の要望に応じて、日本の有名ブランド商品(多くは、化粧品や美容雑貨、菓子等)を店頭で購入します。そのため、ソーシャルバイヤーに購入してもらえるために、中国人消費者の評価を高めておくことが大切です。

②ソーシャルバイヤーの購入先に出品することが大切です。転売事業なので、ソーシャルバイヤーは免税サービスが利用できる百貨店、家電量販店、ドラッグストアなどを利用するのが一般的です。また、大量購入することによって、購入先から特別割引を提供されるソーシャルバイヤーも多いでしょう。ソーシャルバイヤーはタオバオなどにも、日本で調達した商品を掲載していますが、中国国内の正規輸入代理店が販売する価格よりも安くなることも顕著にみられます。

③中国語対応のカスタマーサービスの設定も必要です。ソーシャルバイヤーからの問い合わせに柔軟に対応できる体制づくりが必要になってきます。

ソーシャルバイヤーによる大量購入が多く、その「爆買い」が世界で話題になった時代がありますが、2018年の11月に新たに施行された法律により、ソーシャルバイヤーよる大量買いが冷え込みました。小売店で商品を大量購入しECで転売するソーシャルバイヤーには、「電子商務経営者」資格が求められると同時に、納税対象にもなりました。そして、個人が海外製品を大量に持ち込んで販売することには、厳しい罰則が適応される制度に移行しました。現在、ソーシャルバイヤーを活用するコストメリットが日本のブランド側からみると少なくなってしまいました。しかし、日本製品を積極的に中国に紹介したいソーシャルバイヤーが非常に多く存在し、日々SNS上で中国ではまだ知られていない日本の商品を積極的に紹介し続けていますので、ソーシャルバイヤーの活用は現在でも無視できないビジネスモデルとなっています。

2.  越境EC販売について
越境EC販売とは、インターネットを活用して、日本国内から海外へ向けて商品を販売するEC(電子商取引)のことを指します。中国本土の中国人消費者が日本のECサイトもしくは中国の越境ECサイトで商品を購入すると、その商品が日本(直送モデル)もしくは、中国保税倉庫(保税区モデル)から中国消費者の手元まで配送されます。

コロナ禍でインバウンドビジネスが急速に冷え込むと、中国を中心に越境ECの世界の市場規模は急激に成長しました。経済産業省の調査報告によると、2020年の中国の越境EC市場規模(中国の消費者が日米から商品を購入した合計金額)は4兆2,617億円でした。

越境EC販売については、以下の4つのビジネスモデルがあります。

①直送モデルのECプラットフォームでオーダーを受けて、EMSを通じて直接購入者の手元に届ける方式です。EMSは越境配送においては、一番利用されている発送手段です。しかしながら、行郵税を受け取り側から徴収する為、返品貨物が多く発生したり、受け取り側に身分証明書の提示を求めないため、本来はB2Cの配送で活用するのはグレーな領域のビジネスモデルとなります。

②直送モデルのECプラットフォームでオーダーを受けて、行郵通関の国際物流で商品を届ける方式です。EMSと違い、関税先払い方式となります。行郵通関発送対応可能なキャリアが増加し、EMSよりも安価に越境配送を行う事が可能になってきました。しかしながら、受け取り側に事前に身分証明書の提示を求めたり、行郵税額の確定までに時間を要したりとEMS発送に比べると手続きが煩雑になるというデメリットもあります。

③直送モデルのプラットフォームでオーダーを受けて、EC総合通関で商品を発送する方式です。関税は先払い方式ですが、行郵通関よりも低税率での通関が可能な為、越境配送を行う企業側としてはもっともメリットがあり、越境ECのスタンダードモデルとも言えます。しかし、EC総合税通関を行うには、中国税関への企業登録やシステム連携、それから決済は中国の決済会社でなければならない等、日本企業だけで実施することは非常に高いハードルが存在します。

④保税区モデルのEC総合通関の方式です。扱える商品は中国政府が許可している商品に限定されます。商品を中国国内の保税倉庫に輸送して仮置きして、オーダーごとに中国国内の保税倉庫から個配できるため、物流費の負担を下げることが可能になります。一方で、コントロールできない保税区在庫を一定数抱える必要があります。

また、日本側の通販サイトを通じて中国進出したいとお考えをお持ちの方も数多くいらっしゃると思いますが、中国ではインターネット上の制限が存在するため、日本のECサイトにアクセスできなくなる可能性があります。対策として、中国国内にサーバーを保有して越境ECの店を自社出店することが考えられますが、中国のサーバーを使用してECショップを運営する場合、現地法人から電信管理機構または国務院の情報産業主管部門まで、ICP(Internet Contents Provider)ライセンスを事前に取得する必要があります。このライセンスの取得はハードルが非常に高いため、天猫国際やJD国際などの中国のEC(Electric Commerce)プラットフォーム上で販売することが今日では一般的となりました。

しかし、越境ECのプラットフォームでは、既に人気の高いブランドの商品が非常に多く、実質的には広告合戦が行われています。中国進出初期段階の企業は、知名度を高めるために人気ブランド以上の多額の広告投資が必要となっています。そのため、初期投資を抑えたい新規参入ブランドにとっては、悩ましい現状が続いているのです

3.  一般貿易販売について
一般貿易とは、輸入ライセンスを持った企業が輸入関税・輸入増値税を払って、商品を中国国内に流通させていく中国の貿易形態です。現在、中国に商品を販売する際、「一般貿易」と「越境EC」が時流なので、中国向けの一般貿易と、保税区越境ECの違いを分かりやすくまとめさせていただきました。

一般貿易 保税区越境EC・直送越境EC
税金 関税税率は商品により異なる

増値税:5~7%

消費税:特定の贅沢品のみ課税

関税:無し

増値税:一般貿易税率の70%

消費税:一般貿易税率の70%

購入金額の制限 無し 有り
通関 輸入ライセンスが必要 消費者の個人名義
輸入規制 厳しい 緩やか

 

一般貿易と越境ECでは、税制や輸入規制が大きく異なります。一般貿易が可能になると、越境ECではなく巨大なユーザー基盤を持つ国内ECをはじめ、あらゆる中国国内のチャネルに商品が展開できます。爆売りブランドとしてビジネス規模を拡大するためには、最終段階に入ります。以下で一般貿易の輸入制限を一部紹介させていただきます。

①食品業界につては、中国は、放射能汚染リスクを回避するという目的で、日本10都県(福島、栃木、群馬、茨城、千葉、宮城、新潟、長野、埼玉、東京)のもの(新潟県産米を除く)に対して、輸入停止措置を講じるとともに、日本の政府機関が発行する証明書を求めています。また10都県以外の地域から輸出されるすべての食品・飼料等に対して放射性物質検査を行います。

②化粧品業界については、その生産者および代理人が、中国国家食品薬品監督管理総局(CFDA)から輸入化粧品衛生許可証明書を取得する必要があります。申請には、成分の検査から効果のテストまでありますので、通常半年以上かかります。

③健康食品業界については、食品として輸入可能であると同時に、中国国家食品薬品監督管理総局(CFDA)から保健食品輸入許可を得る必要もあります。また、中国でない成分や材料が含んでいる場合、新成分を登録するための費用と時間が必要です。

④電気製品業界については、商品に応じて中国の強制製品認証(China Compulsory Certification: 以下「CCC認証」)が必要となる状況もあります。これは、中国で最も広い製品安全性証明書であり、取得するには最低3ヶ月間かかります。

一般貿易を行うためには、輸入ライセンスを持つ現地法人の存在が必要です。自社でコントロールするためには、現地法人が不可欠ですが、現地の総代理店が輸入ライセンスを所有していれば、現地法人なしでも一般貿易は可能になります。一般貿易では、ビジネス規模が非常に大きいですが、現地法人または輸入ライセンスを持つ総代理店の存在が不可欠であり、前述のような輸入制限をクリアしなければなりません。

ですが、最も重要なのは大量販売ができる商品なのかを検証することです。関税や通関、そして物流費用の関係で、日本価格の1.5倍~2倍ぐらいの価格で販売しなければ利益が残らなくなります。日本より高く販売しても、圧倒的な品質や差別化ポイントが存在していれば問題なく中国で爆売りできる可能性がありますが、中国国内ですでに強力なライバルが存在する商品が存在する場合、国外に過剰在庫が滞留することにもなります。こういった競争環境に勝ち残り、さらに一般貿易から中国現地生産に転換して中国国内でトップレベルのシェアを狙えるブランドへ成長させるということが一般貿易とその延長にある成長シナリオと言えます。

最後に
中国ビジネスの3つの方法としてインバウンド販売、越境EC販売、一般貿易販売を見てきました。新規で中国市場に参入する場合、まずどの領域で勝負するかを見極める必要があります。コロナ禍の現在、越境ECに新規参入を検討する場合、当該レポートに示したような過剰な広告合戦を避けて、より戦いやすいプラットフォームを選択することも重要な視点になります。3つのビジネス形態のどれでも可能な商品の場合、インバウンドまたは越境ECの段階で一定の成功を収めてから、一般貿易ビジネスに展開することが望ましいといえます。

ダイレクトチャイナでは、越境ECの支援がメインテーマになります。まず、商品の特性を考慮して、巨大市場で戦いやすいのか戦いにくいのかを中国市場に精通したプロジェクトメンバーとのディスカッションから始めるようにしております。越境ECに近い将来、自社も参画しようとしている企業様とのビジネスモデルのディスカッションを楽しみにしています。ぜひお気軽にお問合せください。

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