<目次>
中国最速成長物流新鋭企業「極兔速逓(J&T Express)」〜中国EC物流最前線〜
中国進出前の極兔速逓について
中国でさらなる急成長を実現した極兔速逓
極兔速逓の会社沿革
まとめ

中国最速成長物流新鋭企業「極兔速逓(J&T Express)」〜中国EC物流最前線〜

今回のレポートは、インドネシア最大級の宅配大手で中国にも進出している「極兔速逓(J&T Express)」を徹底解説させていただきます。同社は中国国内で急成長していECプラットフォーム拼多多(ピンドゥドゥ)の物流オペレーターの一社でもあります。

中国宅配市場はネット販売の普及によりすでに年間1,000億個の宅配取扱個数まで達しております。「極兔速逓」は、その世界一の中国宅配市場の勢力図を再編し、世界で最速成長を実現した物流新鋭企業です。

2021年12月20日、Hurun Research Institute(胡潤研究院)が2021年世界ユニコーンランキングリスト(Global Unicorn Index 2021)を発表しました。極兔速逓(J&T Express)はアリババグループ(Alibaba)傘下の菜鳥網絡(Cainiao、ツァイニャオ)と市場評価額が1,000億元レベルで双璧になった宅配物流会社です。世界ユニコーンランキングリストでは、菜鳥網絡(21年12月時点の評価額340億米ドル)が9位に位置し、極兔速逓(21年12月時点の評価額200億米ドル)が16位につけています。

中国進出前の極兔速逓について

極兔速逓(J&T Express)はかつて中国大手スマホメーカーOPPO(オッポ)のインドネシアゼネラルマネージャーだった李傑氏(Jet Lee)とOPPOの創業者の一人であった陳明永氏(Tony Chen)が2015年にインドネシアで設立した宅配会社です。実は、社名にある「J&T」は李傑氏李傑氏(Jet Lee)の「J」と陳明永氏(Tony Chen)の「T」から名付けられました。また「Jet」(ジェット機)、「Timely」(タイムリーな)、「Technology」(テクノロジー)の意味も含んでいます。

当時、OPPOはインドネシア市場でスマホ出荷量が最も多いスマホメーカーでしたが、李傑氏と陳明永氏は現状に満足せず、スマホメーカーの移り変わりの激しさから電子商取引(EC)向けの物流事業にビジネスチャンスを見出しました。そこで、OPPOの人脈を最大限に利用して宅配ビジネスに着手し始めました。インドネシア市場でもEC産業の発展が急激に加速しており、極兔速逓は伸びている宅配ニーズにタイミングよく応えた結果、インドネシア最大級の宅配企業へと成長を遂げました。インドネシア全体のECによる貨物取扱数は1日当たり300~400万件ですが、極兔速逓が設立してわずか4年間の2019年に、そのうち約100万件を請け負っているのです。まさに市場シェア30%を超える躍進です。

極兔速逓がインドネシア市場最大級の宅配物流企業になりましたが、中国出身の李傑氏と陳明永氏は、インドネシア宅配市場の市場規模に限界があると実感しました。そこで年間1,000億個の宅配取扱個数がある母国の中国宅配市場に進出することを決めました。極兔速逓が2020年3月に中国宅配市場に本格的に進出し、新たな歴史を刻み出すことになります。

中国でさらなる急成長を実現した極兔速逓

極兔速逓が中国市場に参入する前に、中国宅配業界の勢力図は国営の郵便局を除き、アリババ資本が入った四通一達、順豊速運(SF Express)、京東物流(JD Logistics)の3大勢力が市場をリードしていました。四通一達とは、申通快逓(STO Express)、円通速逓(YTO Express)、中通快逓(ZTO Express)、百世快逓(旧・匯通快逓、BEST Logistics Technology)、韻達快逓(YUNDA Express)の5社の総称です。菜鳥網絡がアリババグループの子会社になった後、アリババ資本が入った四通一達が菜鳥網絡の下請け会社となったため、菜鳥網絡が四通一達を統括する形で中国宅配業界の勢力図が更に変わりました。また、2021年10月、四通一達の1社である百世快逓(旧・匯通快逓、BEST Logistics Technology)の中国宅配事業が極兔速逓に11億米ドルで買収されることで勢力図に変化が起こり、極兔速逓は、中国市場に参入してから、たった1年半で14%前後の市場シェアを獲得することになりました。現在の中国宅配業界は順豊速運(SF Express)・菜鳥網絡・京東物流(JD Logistics)・極兔速逓・という四強時代を迎えております。

極兔速逓急成長の秘密については、思い切った低価格戦略でスターしたのが成功要因の1つだと考えております。極兔速逓は中国全土で宅配取扱個数が最も多い地域を主戦場に、他社の共同宅配集配拠点を利用し、低価格戦略で奮戦できたといえます。

中国全土で宅配取扱個数が最も多い地域というのは、中国人で知らない人がいない中国の浙江省義烏(ギウ)市です。中国卸売市場の売上高ランキングにおいては、義烏が1991年から14年間全国第1位の「中国最大の日用品雑貨卸売市場のある街」として知られています。インターネットの動画生中継で商品を販売する「ライブコマース」が急速に広がっている現在、義烏市の北下朱村は中国の「ライブコマースの町」として注目されることになり、引き続き毎日、中国全土最大の宅配取扱個数が発生しています。

また、極兔速逓が戦略の柱にした共同宅配集配拠点を利用するビジネスモデルを解説しましょう。共同宅配集配拠点とは、四通一達や菜鳥網絡の荷物の受取と発送を代行しているサービス拠点とのことで、日本の宅配便であればコンビニ受け取りの概念に近い市中にある宅配取次所のような存在です。各共同宅配集配拠点は数社のプラットフォームの宅配取次を同時に進めているので、各プラットフォームのラストワンマイルは次第に共同物流が社会インフラになってきております。

こういった背景のなかで、極兔速逓が義烏市にある共同宅配集配拠点に宅配サービスを低価格で販売する方法で中国市場に参入しました。同社の参入時の中国義烏市から中国全土配送の最低原価が2元(約28円)でしたが、四通一達や菜鳥網絡は極兔速逓と対戦するために、一時的に1.2元まで値下して対抗しました。しかし、極兔速逓が0.8元という前代未聞の最低価格を打ち出し、大赤字でも市場シェアを取りたい勢いで反撃しました。その結果、極兔速逓が中国市場に進出して2ヶ月間で1日の取扱量は100万個を越えるまで成長することになります。さらに、2020年9月に中国すべての都市を全部カバーする巨大宅配会社に大躍進することになりました。

極兔速逓の急成長が、大手競合に深刻な危機感をもたらしましたので、四通一達は2020年10月から、市場シェアを急速拡大している極兔速逓に、前例がない厳しい対抗策令を打ち出しました。具体的には、すべてのフランチャイズ加盟店に極兔速逓との協業を禁止する通知を出しています。この通達により、極兎速逓と協業するフランチャイズ加盟店には数万円の罰金が科せれることになりました。

 まだまだ市場シェアが小さかった極兔速逓にとって、大手宅配物流会社が手を組んで対抗された衝撃はあまりにも大きいものでした。そこで、李傑氏と陳明永氏はインドネシア市場での成功経験を活かし、再度人脈の活用に目を向けました。李傑氏は自身と同じ、電子機器メーカー歩歩高(BBK)創業者である段永平氏の門下生である中国最大の共同購入型ソーシャルEC大手の拼多多(ピンドゥドゥ)の創業者黄氏にアプローチし、拼多多の宅配事業の受注を画策しました。2021年4月、極兔速逓は拼多多の80%のオーダーを請け負い、1日あたりの受注量が2,000万個を超えました。拼多多から巨大な物量を獲得した極兔速逓は、大手競合包囲網を短期間で脱出し、更なる成長を実現しました。

極兔速逓の会社沿革

2015年8月 インドネシアで事業を開始
2017年11月 インドネシアでの1日の宅配取扱個数が30万を突破
2019年12月 インドネシアでの1日の宅配取扱個数が100万を突破
2020年3月 正式に中国市場に参入
2020年5月 中国での1日の宅配取扱個数が100万を突破
2021年4月 中国での1日の宅配取扱個数が2,000万を突破
2021年10月 百世集団(Best Group)の中国宅配事業を11億米ドルで買収
2021年11月 中国での1日の宅配取扱個数が4,000万を突破

 

まとめ

コロナ時代に中国宅配市場に参入した極兔速逓ですが、低価格とECモール提携によって、中国宅配市場の勢力図が塗り替えました。言うまでもなくEC業界にとって、物流コストが競争力の大きな武器となります。そのEC業界の特性を逆手にとって、EC大手の拼多多を味方につけたことによって、同社は中国の社会インフラの一翼を担う物流企業へと変革を遂げました。

中国宅配市場が成長するにつれ、コスト競争は更に激しさを増しています。極兔速逓などの中国宅配会社は、宅配価格の削減に注力する一方、海外市場にも力を入れ始めました。これから中国市場を狙う日本企業にとって、同社が越境宅配事業に今後どのような変革をもたらすかは大いに注目すべきところです。

ダイレクチャイナは今後も、中国EC市場とEC物流市場の最新動向を研究し、レポートを配信し続けてまいります。また、ダイレクトチャイナでは、極兔速逓に代表される大手中国物流企業とネットワークを構築し、貴社のビジネスモデルに合わせて、日中間のもっとも効率的な物流の仕組みを提案させていただきます。

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